- はじめに -

 入団したばかりの子供が、一人前に「難しいの来い!」と要求し、それに応えて「よし、勝負!」とノッカーの大きな声が・・・。グランドの中では、そんな未来の大選手とコーチ陣のやり取りが1日中響き渡っています。

- リーグ(*1)の概況 -

 武蔵府中リトルリーグは、全国に12連盟(リーグ数:302リーグ)ある(財)全日本リトルリーグ協会の、東京連盟(リーグ 数:37リーグ)に属しています。我々のリーグは、リトルリーグの中で“マイナーリーグ”と呼ばれています。小学5年生夏までの期間を対象として、硬式球 を使った活動をしている組織です。更にその中には、小学3年生夏までの期間を対象とした“ジュニアリーグ(Tボール)-柔らかいボールを使って、スタンド に置いたボールを打つルール “にも参加していますので、年中、年長さんの頃から入団が出来て、野球に親しみながら、技術を身に付けていくことが可能なチームです。因みに、小学5年生 夏から中学1年生夏までの期間は、”メジャーリーグ“と呼ばれる組織があり、毎年夏、米国で行われる世界大会を目標に頑張っています。武蔵府中は、 2000年世界大会3位、2003年世界大会優勝、
2013年には2度目の世界大会優勝といった素晴しい成績を残しています。

 (*1)リーグ:リトルリーグでは、一般的な言葉の“チーム”の意味で、“リーグ”という表現を用います。

- リーグの成績 -

 マイナーリーグには、東京連盟全体の大会が2つ、東京西部地区の西東京大会、および近隣4連盟合同の大会が1つ、計4つの公式大会があります(その他にも大小いろいろな大会に参加しています)。

近隣には、北関東連盟(リーグ数:19リーグ)、東関東連盟(リーグ数:31リーグ)、神奈川連盟(リーグ数:23リーグ)という3連盟があり、この各連 盟代表と覇を競う大会(これを関東大会と呼んでいます)が、マイナーやジュニアリーグの最高の舞台となっています。マイナーリーグの場合、春の"西東京 大会"が特に重要で、東西の決勝に残った4チームが争い、決勝進出チームのみが年1回だけ開催される関東大会への出場権を得ることができます。

 ここ数年間のマイナーリーグの成績は- 


            東京連盟春季大会    関東4連盟関東大会    西東京大会    東京連盟秋季大会
            (マイナー大会)                                                                   (四年生大会)
2013   準優勝        優勝(初)          準優勝     準優勝
2012   ベスト8         -              優勝      優勝
2011       優勝                        3位             3位                2回戦敗退
2010       優勝                        準優勝           3位                 準優勝
2009       2回戦敗退                 -              準優勝            準優勝 
2008       準優勝                     準優勝                        3位                 3位
2007        ベスト8                     -              優勝             3位
2006       準優勝                     ベスト8                          優勝               優勝
2005        ベスト8                     -              ベスト16         ベスト16
2004        優勝                       初戦敗退                       優勝                優勝

といった、毎年輝かしい成績を残しています。

- 選手の構成 -

 我々のチームは、初めから野球が出来る、所謂“上手い子供達”で構成されている訳ではありません。グランドに足を入れること すら嫌がっていた子供、入団してから野球を覚えた子供、軟式球でやっていたという子供など、入団までの野球の経験値で云えば、ゼロから100まで、千差万 別の子供達で構成されています。むしろ、初めから硬式球でやっていた子供が少ない状態です。(ご父兄についても、状況は全く同じです。高校、大学まで野球 をやっていたお父さんも居られれば、全く野球を知らず「子供がやりたいと云うもので…」というお父さんまで、千差万別です。)

 このことは例年のことであり、“野球の楽しさを知る”という基本方針で取組んでいるマイナースタッフにとっては、当たり前のことと考えています。経験値 ゼロの子供が、ちょっとした興味がきっかけで野球を始め、興味が継続的な活動に繋がり、継続がちょっとした達成感を生み、達成感が更に大きな目標となり、 その目標達成のために更に向上していくような…、そうしたプログラムを提供することが、我々スタッフ一同の役割と認識しています。硬いボールのゴロやフラ イを捕れたり、投げられたりするようになり、ボールを恐れずにバッティング出来るようになっていき、それが試合で発揮され、選手本人だけでなく、父兄も喜 んで貰える環境の提供、これを目標にスタッフ一同取組んでいます。 “技”は勿論ですが、“心”の成長も重要な楽しみの一つです。

- スローガン(指導の姿勢) -

 リーグのスローガンは、「学ぶ姿勢と人間性」です。これには、“相手の言う事を、集中して聴き、理解しようとする姿勢を育み ながら、誰にでもきちんと大きな声で挨拶が出来、礼儀正しく接することが出来るようになって貰う”というメッセージが込められています。1日の練習の流れ から、そうしたシーンを挙げてみます。グランドに足を踏み入れるなり、“おはようございます”の大きな声が響きます。グランドの出入り時は、帽子を脱いで 一礼することを励行しています。グランド内に野球関係者が来られた際は、練習を中断して主将を発声の下で、挨拶、一礼をしています。また、指導時などコー チが話している間は、必ず脱帽し、相手の目を見て聴く選手の姿があります。技術指導の前後は必ず挨拶をする…などなど。他のグランドでも見受けられるかも 知れないこうしたシーンを、我々スタッフは、大切な“躾”と考え、最も重要にしています。出来ない子供には、“技術以前の問題!“として、容赦ない叱咤激 励の声が飛んでいます。こうして身に付ける集中力や礼儀は、グランド内だけでなく、家庭や学校での基本的な姿勢として活かされていくものと考えています。

 このような環境の中、子供達を中心に置いて、コーチ陣、ご父兄の三者が一体となった運営を心掛けています。お父さん方には、積極的にグランドに入って 貰っています。グランド整備、ネット準備を始め、トスやバッティング時の守備要員にまで、ありとあらゆる場面に参加し、子供達の練習風景を共有して貰って います。<恐らく、家での父子の野球談義は、大きな花が咲いていることと思います>


- コーチの役割 -

 コーチ陣には、2つの暗黙の了解事項があります。1つ目は“コーチが疲れてはいけない”、2つ目は“一人は必ずフォローに” という姿勢です。1つ目の“心” は、子供達一人ずつの練習量を充分に確保する、という考えです。一人ずつがその量に達するまで、また全員が同じ量に達するまで、投げ続け、ノックをし続け よう、というコーチ陣の意気込みです。練習が不足していると感じた時は、お互いの昼食をシフトしながら、グランドを使い続けることもしています。2つ目の “心”は、ともすれば“お叱り”や“注意”の掛け声が多くなるこの時期の子供達に、同じ内容を複数のコーチ陣から発しない、という姿勢です。それでなくて も多くのメッセージを受け止める訳ですから、複数のコーチが同じ事を発する必要はないと考えています。リーグのスローガンにも通じることですが、特に“お 叱り”や“注意”が発せられた時は、他のコーチは必ずフォロー(子供がより理解することへの手助けや、励まし、慰めなど)に廻ります。“ご家庭でも…”と いうことで、お父さん、お母さんにも、常に次のようなお願いをしています-“嬉しいメッセージを届けてくれた子供には、「良かったね、次も頑張ってね」。 悲しいメッセージを届けてくれた子供には、「残念だったね、次は頑張ろうよ」。最も自覚しているのは本人ですから、(特に)失敗やミスに対するコメント を、決して家庭に持ち込まないで下さい”と-。

以上のような基本的な考え、動きを軸として、更に子供一人ずつの性格や特徴をスタッフが話し合いながら、その子供に合った指導がプラス出来るよう心掛けています。


- 野球観 -

 今まで述べてきたように、“捕って、投げて、打てる”ようになることは当然として、そうなるまでのプロセスを大切にしていま す。野球は、“舞台”と同じだと考えています。主役になったり、脇役になったり、裏方になったり…、一試合の中でもその役割が目まぐるしく変化し、変わる 度にそれぞれの役割を演じる必要があります。打球が飛んできたら、捕球する選手が主役であり、カバーする選手が脇役となります。打席に立てば、打者が主役 であり、走者が脇役となります(盗塁のサインが出たら、主役、脇役は交代します)。このように皆が時々の役割で一つの舞台を演じることが、野球だと考えて います。舞台ですから、観客が必要です。最も大切な観客は、お父さん、お母さんです。「観客に感動を与える舞台であったか…」、我々スタッフが1日の終了 時に子供達に問いかける言葉の1つです。スタッフがよく子供達に問いかける言葉を挙げて、締めくくりとします。

① 今野球が出来ることに感謝を

② お父さん、お母さんに感動を

③ グランドは「練習」の場でなく、練習の「成果」を発揮する場である

④ 大勢の人から応援される選手になれ

⑤ 人が嫌がる事を進んで出来る選手になれ

“野球をやってみたい”という子供さんでしたら、経験値は全く関係ありません。

是非一度グランドに足を運んで、体験をしてみて下さい。

                                                       武蔵府中リトルリーグ

                                                       マイナー監督 弘中茂樹





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